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目 次

1.成年見制度はどうして必要なの
2.法定後見制度
 2.1 どうやって保護するの
 2.2 本人は制限をうけますか
 2.3 利用するまでの手続
 2.4 申立人は誰ですか
 2.5 成年後見人の仕事は
 2.6 後見監督人等とは
3.任意後見制度
 3.1 任意後見制度等の流れについて
 3.2 任意後見制度の特徴について
4.成年後見制度の利用例

 

成年後見制度はどうして必要なの

法律行為の当事者が意思表示をした時に意思能力を有しなかったときは、その法律行為は、無効となります。[民法3条の2]
このように、結果を判断できない人がした取引は無効となりますが、日常生活の中で、判断応力が十分かどうかを個別に判断していたのでは、安心して取引ができないので、法律では一般的に判断能力が不十分と考えられる人を類型化しています。
このような方を「制限行為能力者」と呼びますが、大きく分けて次の通りとなります。[民法20条1項]
(1)未成年者
(2)成年のうち「成年被後見人」「被保佐人」「民法17条1項の審判を受けた被補助人」
類型化して、この方々を保護するとともに、円滑な取引が行えるように、平成12年(西暦2000年)4月に「民法」で成年後見制度が導入されました。
また、併せて「任意後見契約に関する法律」も同時に施行されました。
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法定後見制度

法定後見制度とは「民法」で定められた成年後見制度のことで、次の通り類型化しています。

成年被後見人
精神上の障害により事理を弁識する能力を欠く状況にある者については、家庭裁判所は、一定の者の請求により、後見開始の審判をすることができます。[民法7条]
一般的には、日常的に必要な買い物も自分ではできない状態の方をいいます。

被保佐人
精神上の障害により事理を弁識する能力が著しく不十分である者については、家庭裁判所は、一定の者の請求により、保佐開始の審判をすることができます。[民法11条]
一般的には、日常的に必要な買い物くらいは単独でできるが、自動車の売買や自宅の増改築などは自分でできない状態の方をいいます。

被補助人
精神上の障害により事理を弁識する能力が不十分である者については、家庭裁判所は、一定の者の請求により、補助開始の審判をすることができます。[民法15条]
一般的には、不動産の売買や自宅の増改築などは自分でもできるかもしれないが、本人のためには、誰かに代わってやってもらったほうがいい程度の方をいいます。

※能力の程度を判断するには、原則として意思の「鑑定」や「意見」等が必要です。認知症高齢者を判定するための評価スケールとして、一般的に「長谷川式簡易知能評価スケール」というものがありますが、これは30点満点で、一般的に20点未満だと認知症の疑いがあるといわれています。
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【2.1 どうやって保護するの】

民法では、これらの方を保護するために、保護者が選任され、さらにその保護者には一定の権限が与えられています。

成年被後見人
「成年後見人」という保護者が付されます。[民法8条]
成年後見人は、本人に代わっていろんな契約を結んだり、本人に不利益な契約が行われた場合にはそれを取り消したりして、本人の支援を行います。ただし、日用品の購入等については取り消すことはできません。[民法9条]

被保佐人
「保佐人」という保護者が付されます。[民法12条]
不動産の売買など一定の重要な取引(民法13条1項各号)については、保佐人の同意を得なければならず、同意なしで取引をした場合は保佐人がその取引を取り消すことができます。[民法13条1項4項]
また、民法13条1項各号に掲げる行為以外の行為をする場合であっても、その保佐人の同意を得なければならない旨の審判をすることができます(非常にまれなケースです)が、日用品の購入等についてはこの限りではありません。[民法13条2項]
さらに、保佐人に代理権を付与することも可能です。[民法876条の4]

被補助人
「補助人」という保護者が付されます。[民法16条]
不動産の売買など一定の重要な取引(民法13条1項各号)の一部の行為については、補助人の同意を得なければならず、同意なしで取引をした場合は補助人がその取引を取り消すことができます。[民法17条1項4項]
さらに、補助人に代理権を付与することも可能です。[民法876条の9]

※取消しがなされると、その法律行為は最初から無効となりますので、両者は不当利得の返還義務を負うこととなります。詳細は、民法121条及び703条並びに704条をご覧ください。

※制限行為能力者と取引をした場合の相手側に対しては、特別に催告権が認められています。詳細は民法20条をご覧ください。

※制限行為能力者が行為能力者であることを信じさせるため詐術を用いた場合は取り消すことができません。詳細は民法21条をご覧ください。
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【2.2 本人は制限をうけますか】

成年被後見人等となった場合、次のような制限を受けることとなります。

成年被後見人
(1)公務員等の就業資格の喪失[国家公務員法38条 地方公務員法16条等]
(2)専門資格の喪失(行政書士等)[行政書士法2条の2]
(3)株式会社の取締役及び監査役の欠格事由[会社法331条2項335条1項]
(4)建設業許可を受けようとする法人の役員、本人、令3条使用人の欠格事由[建設業法8条1項1号11号12号]
(5)印鑑登録の制限[福岡市印鑑条例2条]
※選挙権と被選挙権は平成25年5月の公職選挙法等の一部を改正する法律により回復しました。

被保佐人
上記(1)~(3)

被補助人
特に制限はありません。
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【2.3 利用するまでの手続】

法定後見制度を利用するには家庭裁判所への申立が必要です。ここでは成年後見人を例に、その主な手続の流れを見ていきます。詳細は「家事事件手続法」等をご覧ください。

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【2.4 申立人は誰ですか】

法定後見制度を家庭裁判所へ申し立てるには申立人が必要です。ここでは、どのような方が申立人になれるのかということをご説明します。

成年後見人 [民法7条]
(1)本人、配偶者、4親等内の親族
(2)未成年後見人、未成年後見監督人
(3)保佐人、保佐監督人、補助人<補助監督人
(4)検察官(身寄りのないお年寄りなどだが極めてまれです)
(5)市長村長(身寄りのないお年寄りなどで特に必要な場合)

保佐人 [民法11条]
上記(2)と(3)は異なりますが、それ以外は同じです。

補助人 [民法15条]
上記(2)と(3)は異なりますが、それ以外は同じです。
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【2.5 成年後見人の仕事は】

成年後見人等はご本人を保護するためにさまざまな仕事がありますが、ここでは成年後見人を例に、その概要のみご説明します。

財産管理
(1)成年被後見人の財産を管理します。(一定期間ごとに家庭裁判所への報告が必要です。)
(2)成年被後見人を代理して取引を行います。(成年被後見人の居住用不動産等を売却等する場合は家庭裁判所の許可が必要です。また、成年後見人と成年被後見人の利益が相反する場合は特別な手続が必要です。)

身上監護
生活や療養看護に関する、契約の締結・履行の監視・費用の支払い・契約の解除等を行います。

次の行為は成年後見人の職務ではありませんのでご注意ください。
介護等の事実行為、医療行為の同意、身元引受、一身専属的な行為等
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【2.6 後見監督人等とは】

家庭裁判所は、必要と認めるときは、成年後見等に加えて後見監督人等を選任することがあります。ここでは、成年後見監督人を例に、その概要についてご説明します。

後見監督人の選任について
(1)家庭裁判所は、必要と認めるときは、被後見人、その親族若しくは後見人の請求により又は職権で後見監督人を選任することができます。[民法849条]
(2)後見人の管理する財産が多額の場合、親族間の利害対立が激しく後見人等の事務処理の適否をめぐり紛争の生じるおそれがある場合等に選任されます。

後見監督人の職務について
(1)後見人の事務を監督すること。
(2)後見人が欠けた場合に、新たに後見人を家庭裁判所に請求すること。
(3)急迫の事情がある場合に、必要な処分をすること。
(4)被後見人と後見人との利益が相反する行為について被後見人を代表すること。
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任意後見制度

任意後見制度とは「任意後見契約に関する法律」で定められた成年後見制度のことで、判断応力があるうちに、将来の代理人を定め、自分の判断応力が不十分になった場合に備えて「任意後見契約」を公正証書で結んでおきます。将来自分はどんな生活をしたいかなど、自分の将来を自分で決めることができます。法定後見制度がすでに認知症が進んでいるのに対し、これは元気なうちに準備しておくという点で異なります。
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【3.1 任意後見制度等の流れについて】

任意後見制度を利用する際、将来のことを考慮し、任意後見契約の締結に併せて「見守り又は財産管理契約」「死後事務契約」「公正証書遺言」までをセットで準備しておく方もおられます。家族状況等により異なると思いますので、最も安心できる方法を専門家にご相談されることをお勧めします。

移行型
任意後見契約と同時に見守り又は財産管理契約を同時に結んで、ご本人との信頼関係を構築し判断能力の低下の有無を把握します。

将来型
任意後見契約のみを結んでおく方法です。判断能力の低下の有無を把握できる親族が受任者となる場合に適しています。

即効型
任意後見契約を結ぶと同時に家庭裁判所へ任意後見監督人の選任を申し立てる方法です。

その他
ご本人が死亡された後の「死後事務契約」や「公正証書遺言」も結んでおくとさらに安心です。

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【3.2 任意後見制度の特徴について】

任意後見制度は法定後見制度と異なり、次のような特徴があります。

(1)後見・保佐・補助は「民法」で定められた制度ですが、任意後見制度は「任意後見契約に関する法律」という法律で定められた制度です。
(2)任意後見契約は必ず公正証書でしなければならず、契約の内容は東京法務局に登記されます。
(3)任意後見契約は、判断能力がある元気なうちに締結しておくものです。
(4)判断能力が不十分となった場合には、家庭裁判所に対して任意後見監督人の選任申立を行って、任意後見監督人が選任されてから効力が発生します。
(5)後見・保佐・補助と異なり、自分自身で信頼できる人を任意後見人とすることが可能です。
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成年後見制度の利用例

具体的に、次のような方は成年後見制度をご利用されることをお勧めします。

(1)ひとり暮らしだが、まだ十分やっていける。しかし、将来は施設に入る手続をしたり、費用を支払ってもらいたい。併せて、これまで経営してきたアパートの管理もお願いしたい。場合によっては、今からでも支援を頼みたい。
任意後見制度のご利用をお勧めします。

(2)アルツハイマー症と診断された。今ひとり暮らしだが、自分の意志で悔いのない人生を送りたい。
任意後見制度もしくは法定後見制度のご利用をお勧めします。

(3)使うはずもない高価な健康器具など頼まれるとつい買ってしまう。今後が不安。
任意後見制度もしくは法定後見制度のご利用をお勧めします。

(4)私が死んだり、認知症になったときに知的障害のある子供の将来が心配。また、私自身の生活のことも不安。
任意後見制度もしくは法定後見制度のご利用をお勧めします。

(5)認知症の父の不動産を売却して入院費に充てたい。
法定後見制度のご利用をお勧めします。

(6)認知症で寝たきりの父の面倒をみて財産管理をしてきたが、他の兄弟から疑われている。
法定後見制度のご利用をお勧めします。

(7)知的障害者の施設です。障害者年金を親族が管理しているが入所費用やレクレーションの費用を支払ってくれないので困っている。
法定後見制度のご利用をお勧めします。

出典:公益社団法人 成年後見センター・リーガルサポート
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