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目 次

1.有効な遺言書とは
2.3種類の遺言書
3.遺言書に記載できること
4.遺言書の検認とは
5.遺言執行者の役割
6.遺留分への配慮

 

1.有効な遺言書とは

遺言は、被相続人が、死亡後の自己の財産に関し最終意思を表示した場合には、その意思を尊重するという制度です。
遺言の方式は民法に定められており、その方式を満たさない場合には、遺言としての効力が認められないことになります。[民法960条]

遺言自由の原則
遺言は15歳以上の人で、かつ遺言をするときにおいてその能力を有する者であれば、誰でも自由にすることができます。[民法961条963条]
一度遺言をしたとしても、遺言の方式に従いさえすれば、いつでも遺言の全部または一部を自由に撤回することができます。[民法1022条1023条]
遺言自由の原則を保証するために、遺言者は遺言を撤回する権利を放棄することができないとされています。[民法1026条]
また、詐欺等によって被相続人に相続に関する遺言をさせたり、撤回、取消し、変更させたものは相続人となることができません。[民法891条]
遺言によって遺産の処分を自由にすることができるのが原則ですが、相続人の遺留分を害することはできません。[民法1028条]
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2.3種類の遺言書

民法で定められた遺言の方式には、大きく普通方式と特別方式がありますが、ここでは、一般的な普通方式である3種類の遺言書についてご説明します。
また、遺言書作成の前提として、2人以上の者が同一の証書で遺言することはできません。[民法975条]

自筆証書遺言
遺言者がその全文・日付・氏名を自署し、押印することによって作成します。ワープロ、タイプ等による作成は認められていません。遺言の効力に問題を残さないためにも、戸籍上の指名で実印を使用するのが望ましいと考えられます。[民法968条]
<長所>
・もっとも簡単で費用がかからない。
・遺言の存在及び内容を秘密にできる。
<短所>
・遺言書を紛失したり、死亡後に見つからない可能性がある。
・偽造、変造される危険性がある。
・方式の不備、文言の解釈に問題が生じる可能性がある。
・死亡後、遺言書は家庭裁判所の検認を受けなければならない。

なお、2019年1月13日より「自筆証書遺言の方式」が緩和されており、また2020年7月10日より「法務局による自筆証書遺言の保管制度」が創設されました。
詳細はこちらからダウンロードしてください。

秘密証書遺言
遺言者が遺言書委署名押印し、遺言者がその証書を封じ証書に用いた印章をもってこれに封印し、遺言者が公証人1人及び証人2人以上の前に封書を提出して自己の遺言書である旨並びにその筆者の氏名及び住所を申述します。その後、公証人がその証書を提出した日付及び遺言者の申述を封書に記載した後、遺言者及び証人とともに署名押印します。
自筆証書と異なり、署名齋江自筆であれば本文は代筆、ワープロ、タイプライターでも可能です。[民法970条]
<長所>
・遺言書の存在を明らかにしながら、内容を他者に秘密のまま保管できる。
・自書能力がなくても作成できる。
<短所>
・遺言の内容は公証人が関与しないため疑義が生じる可能性がある。
・公証人役場には遺言y祖を作成した事実のみは記録されるが、公証人役場に原本が保管されるわけではないので、遺言書の紛失、隠匿、未発見のおそれがある。
・死亡後、遺言書は家庭裁判所の検認を受けなければならない。

公正証書遺言
証人2人以上の立会のもと、遺言者が遺言の趣旨を公証人に口授し、公証人が遺言者の口述を筆記しこれを遺言者及び証人に読み聞かせ又は閲覧させ、遺言者と承認が筆記の正確なことを承認した後各自これに署名し押印し、公証人が方式に従って作ったものである旨を付記してこれに証明押印します。[民法969条]
公正証書遺言作成に際しては次のものが必要です。
1 遺言者の実印及び印鑑証明書
2 相続人の戸籍謄本及び住民票、受遺者の住民票
3 各証人の住民票及び証人認印
4 不動産登記簿謄本及び固定資産税評価証明書
5 預金通帳及び株券の写し
6 受遺者が法人の場合、法人登記事項証明書と代表者の印鑑証明書
※実際には、公証人と打ち合わせをする際に必要な書類が求められます。
<長所>
・遺言者は公証人が作成するので方式不備や意義不明で無効になる危険がない。
・遺言書原本は公証役場に保管されるので、内容の変造・紛失の危険がない。
・死亡後の裁判所の検認が不要である。
・文字を書くことができない者も作成できる。
<短所>
・公証人役場に証人とともに行かなくてはならないので、多少面倒である。(病気等で行けない場合は、公証人に病院、自宅まで来てもらうこともできます。)
・費用がかかること。
・遺言の存在及び内容が証人等に知られてしまう。
※公正証書遺言の承認2人を誰にするか
①未成年者、②推定相続人及び受遺者並びにこれらの配偶者及び直系血族、③公証人の配偶者、四親等内の親族、書記及び使用人は、証人になることができません。[民法974条]
証人は、遺言の作成に立会い、作成された遺言が遺言者の真意にでたものであることを証明する者なので、それに適した能力を持ち、利害金kを有しない行政書士等の専門家をお奨めします。

【公正証書遺言のおすすめ】
・公正証書遺言以外の遺言書は、被相続人死亡時に家庭裁判所で検認を受けなければならず、そのために相続人全員に家庭裁判所から呼び出しが行われます。したがって、遺言書執行するためにはこのこの検認が必要となります。しかし公正証書遺言はこの検認が不要ですので、遺言の執行がスムーズに行われます。
・遺言書は、偽造・方式不備・文言の解釈等で相続人間でトラブルとなることが多いのですが、公正証書遺言ではそういうトラブルはほとんど発生しません。
・公正証書遺言は作成するときは多少面倒で費用もかかりますが、遺産分割協議書の作成も原則として不要となりますので、お亡くなりになった後の費用や手間を考えると決して高いものではなく、残された遺族のことを考えると最も安心で信頼できる遺言方式となります。
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3.遺言書に記載できること

遺言書に遺言者の意思を書くのは自由ですが、遺言書に書いてあるすべてが相続人に強制力を持つことにはなりません。遺言として法律的に効力が生じる事項はおおよそ以下の時効です。(これを「法定遺言事項」といいます。)

相続に関する事項
(1)推定相続人の廃除とその取消し[民法893条894条2項]
(2)相続分の指定又は指定の委任[民法902条1項]
(3)特別受益者の相続分に関する指定[民法903条3項]
(4)遺産分割方法の指定又はその委託[民法908条前段]
(5)遺産分割の禁止[民法908条後段]
(6)共同相続人間の担保責任の定め[民法914条]
(7)遺贈の減殺方法の指定[民法1034条ただし書]

財産処分に関する事項
(1)包括遺贈及び特定遺贈[民法964条]
(2)一般財団法人の設立[一般法人152条2項]
(3)信託の設定[信託3条二]

身分に関する事項
(1)認知[民法781条2項]
(2)未成年後見人の指定、未成年後見監督人の指定[民法839条848条]

遺言執行に関する事項
遺言執行者の指定又はその委託[民法1006条1項]

その他
祭祀承継者の指定[民法897条1項ただし書]

※上記青書の事項は、生前に自ら行っておくことも可能です。
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4.遺言書の検認とは

公正証書遺言の場合を除き、およそ遺言者の遺言意思を記載したものであると認められる文書については、家庭裁判所に検認の申立てをする必要があります。
封印されているものについては、家庭裁判所において、相続人又はその代理人の立会いがなければ、開封することができません。[民法1004条3項]

検認の請求義務者
遺言書の保管者は、相続の開始を知った後、遅滞なく、これを家庭裁判所に提出して、検認の請求をしなければなりません。保管者がいない場合、遺言書を発見した相続人も同様です。[民法1004条1項]
検認の義務がある者がこれを怠り、その検認を経ないで遺言を執行し、又は家庭裁判所外においてその開封をした者は、5万円以下の過料の制裁があります。[民法1005条]

検認の申立て
被相続人の死亡当時の住所地を管轄する家庭裁判所に申立てをする必要があります。添付書類としては、申立人、遺言者、相続人全員、受遺者全員の戸籍謄本(遺言者については、出生から死亡までの全部)等です。

検認期日について
封印の施されている遺言書の開封を伴う場合には、家庭裁判所賀あらかじめ期日を定めて相続全員に検認期日を通知して裁判所に呼び出します。呼び出しに対して不出頭者がいる場合でも裁判所は開封して検認手続を行うことができると解されています。
封印のない遺言書についても相続人等に検認期日の通知をしているのが通例です。

検認の実施
検認が実施されると検認調書が作成され、遺言書原本に「検認済み」の表示がなされたうえで提出者に返還されます。
また、検認に立ち会わなかった申立人、相続人、受遺者、その他の利害関係者に対して、裁判所書記官から検認がなされた旨の通知をします。

検認の効力
遺言書の検認は、遺言の有効・無効の判断をするものではなく、遺言書の形式、態様など専ら遺言の方式に関する一切の事情を調査して遺言書そのものの状態を確定するための手続です。これにより、あとから偽造されたり変造されたりすることを防ぐという意味もあります。

【注意事項】
自筆証書による遺言は封印されているものを検認前に誤って開封してしまったとしても、それ自体で遺言書が無効となるわけではないので、きちんと必ず検認してもらってください。
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5.遺言執行者の役割

遺言執行者とは、遺言の内容を実現するために特に選任された人、相続人の代理人となる人です。遺言の内容どおりに実現されるかどうかは、遺言執行者次第ということも言えます。

遺言執行者の役割
遺言執行者は、相続財産の管理その他遺言執行に必要な一切の行為をする権利義務を有します。[民法1012条1項]
これにより相続人は、相続財産の処分その他遺言執行を異妨げる行為をすることができません。[民法1013条]
しかし、特定の遺産についてのみの遺言であれば、その遺産についてしか遺言執行者の権利義務はありません。[民法1014条]
遺言執行者は相続人の代理人とみなされますので、特に不動産の遺贈などの場合は、遺言執行者が登記義務者である相続人の代理人となるので、スムーズに移転登記ができます。[民法1015条]

遺言執行者の指定
遺言執行者は、遺言で指定します。また、遺言で指定の委託をすることもできます。[民法1006条1項]
もし、遺言で指定していなかったり指定後遺言執行者が死亡などしていた場合は、家庭裁判所に遺言執行者選任を請求することもできます。[民法1010条]

遺言執行者の要件
原則誰でもなれますが、未成年者や破産者はなれません。
推定相続人でも良いのですが、後日相続人間でトラブルとなることも考えられますので、利害関係がない行政書士等の専門家に委託されることをお奨めします。

遺言執行者への報酬
遺言書で、遺言者と遺言執行者間で定めておくことができます。もし、定めがなければ、相続開始後、遺言執行者と相続人間で相談するか、家庭裁判所で定めてもらうこととなります。[民法1018条]
専門家への報酬額はさまざまですが、報酬を含む遺言執行費用は相続財産から負担することとなります。[民法1021条]
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6.遺留分への配慮

遺言をするにあたり、遺留分に関する規定に反することはできませんので、基本的には各人の遺留分を侵害しないように配慮する必要があります。[民法1028条]
もっとも、遺留分を侵害する遺言書であっても、そのような遺言書を作成すること自体は違法ではなく、また、その遺言が無効となるわけではありませんが、遺留分権者から減殺請求された場合はこれに応じなければなりません。[民法1031条]
したがって、遺留分減殺請求をしないことを求める旨を定めておいたほうがトラブル防止に効果的と考えられます。ただし、遺言書に遺留分減殺請求をしないようにと記載していても法的拘束力はありませんので注意が必要です。

なお、2019年7月1日より、遺留分を侵害された者は、遺贈や贈与を受けた者に対し、遺留分侵害額に相当する金銭の請求ができるようになりました。
詳細はこちらからダウンロードしてください。
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